テレビ局「AD(アシスタントディレクター)」の呼称廃止の報道について思うこと

はじめに

先日ネットニュースで、日テレを始めその他のテレビ局が「AD」の呼称を廃止する動きが出ているという内容を目にしました。

色々な意見があるようですが、これについて自身の考えや問題点をまとめてみようと思います。

 

そもそもアシスタント・ディレクターとはなんなのでしょうか。

辞典で確認してみました。

アシスタントディレクター

アシスタント・ディレクター [assistant director] 《放送》番組演出担当者の補助.

<参考:学研国語大辞典>

 

 

アシスタントディレクター(Assistant Director, AD)は、放送・映画業界等における、演出部の職種。

演出部のチーフであるディレクターの下に位置する。

演出補・演出助手・演出補佐などと呼ばれることもある。

また、近年ではディレクターへの昇格を望まない専業ADも存在している。

基本的にテレビと映画のADは別物であり、テレビのADが事務を含めた雑用であるのに対して、

映画の助監督は監督の代行や資金面や創作面での一定の裁量権を有している。

職権に於いて著しい相違があるのが、日本的な特徴である

<参考:Weblio辞典>

番組・映画制作の演出担当を補佐する役割がアシスタントディレクターのお仕事のようです。

では、”補佐”とは一体何を指すのでしょうか。具体的な仕事内容を見てみましょう。

 

 

アシスタントディレクターの仕事内容

以下現在アシスタントディレクター職を募集している求人サイトから、仕事内容を抜粋しました。

<業務内容>
番組作りの最初から最後まですべてを担当できます!

・企画会議:企画提案、ネタを考えます。

・リサーチ:決定した企画について書籍やネット、インタビューなどを通して裏付け。

  • リサーチを元にディレクターがおおまかな台本を作ります。

・ロケ準備:取材先との交渉ややりとり、ロケハン、移動車や食事の手配など。

  • ロケ当日はロケがスムーズに進むよう全般的なアシストを。簡単な撮影ならアシスタントがやる場合も

・スタジオ撮影:弁当や楽屋の準備、小道具作り、スタッフとの打ち合わせなど全般。

・編集準備:撮影素材を編集機材に取り込んだり、文字起こしなど。

  • 次回予告の編集や新聞のラテ欄に載せる文章を考えたりすることも

・本編集:字幕台本やインサートする画像などの準備、誤字脱字のチェックなど。

・MAに立ち会い:最後に音楽やナレーションを入れる業務に立ち会う

・最終チェック

・納品、番組サイト更新、視聴者からの感想チェックなど

想像以上に業務内容が多いですね。

1つの番組の全行程に携わり、且つここに書かれていること以外の細かい雑務やディレクターからの指示をこなしていたら、

何時間あっても時間が足りず、自分のプライベートの確保はまず難しそうな印象です。

皆さんはどう思ったでしょうか。

私自身、映像制作会社に勤務しており、アシスタントプロデューサーを経て、現在プロデューサーのお仕事をしています。

番組制作とは全く異なる業務内容ですが、似通ったところも多数あるため、

多方面から同時にいろんなことを言われ、しかも同時に複数の番組をかけもち、、

熱意でどうにもならないような物量をこなさなければいけない実情がありありと目に浮かびます。。

 

「AD (アシスタントディレクター)」呼称廃止の背景

前述したように、ディレクターの補佐をするアシスタントディレクターの仕事は多岐にわたり、

番組制作の何でも屋と言わんばかりに、様々な業務をこなします。

その労働時間も長時間で、帰宅時間は遅くなることはもちろん、徹夜や泊まり込み、休日も実際は企画のリサーチ等で仕事をするケースも多い状況です。

働き方改革により、TV局も長時間労働を改善する動きを加速させているものの、「AD」には依然として “雑用・長時間労働” のイメージが強く、局内の意識改革のため、呼称を廃止する方向だということです。

 

 

疑問点・問題点

 

実作業は下請けの制作会社である

実際TV番組を作っているのは下請けの制作会社であるケースが多く、

いくら働き方改革で「深夜作業をしない、残業を減らす」と言う風にTV局側がしたところで、

却って制作会社側はその限られた時間内に業務を終える必要がでてしまい、納期が短くなってサービス残業が増えるということもあります。

働き方改革の一部で呼称を変更する以前に、TV局も下請け会社も人員を導入して、上手く業務を分担させる仕組みを作る必要があるのではないでしょうか。

 

変更後は「ヤングディレクター」の呼称に変更するらしい

「アシスタント・ディレクター」から、変更後は「ヤング・ディレクター」へ変更するそうです。

「ヤング」は”若い、幼い、年下の”ですよね。TVや映画の業界では、平均年齢層が年々上がってきており、ディレクタ−に昇格するための明確な基準が設けられていないケースが多く、入社10年以上でもADのままという人もたくさんいる現状です。

そんな中「ヤング」の呼称って、、30代、40代以上の現在のADの人たちにとっての差別にもなりかねませんし、本人達にとってもかなりストレスのたまる呼称ではないでしょうか。。

 

上層部の意識を変えることが重要なのでは

「アシスタント・ディレクター」と実際に現場で呼ぶのは、ADの上司にあたるディレクターやTV関係者です。

ただ単に、呼称を変更することでこのADの業務内容に変化は出ないですし、

却って慣れたADの呼び名を使えないことで、上層部にストレスが溜まって、ADの雑務が増える可能性だってあります。

景気の良い昭和の時代を物量と根性でやり抜いてきた先人の上司たちにとっては、

1人で到底こなせないような量の業務をさばいてやっと一人前という思想がまだまだ浸透しています。

“ADはしんどくて当たり前”というTV制作に携わる上層部の人たちの共通概念を、

“ADは一緒に番組を作る仲間”、”ADはリスペクトすべき存在”と言う風にポジティブなイメージに変える取り組みを進めることが大切です。

TV業界全体で、アシスタントディレクターの業務を面白いもの・楽しいものとして改善していことが重要なのではないでしょうか。

そしてやはりどうしても番組制作の雑務は出てしまうと思うので、人員確保できっちりシフトを組むこと。

こういった上層部の意識改革と、働き方改革の実践的な長時間労働を減らす取り組みが合わさってやっと

アシスタントディレクターの業務の過酷さは、より充実したものに変わるのではないでしょうか。

 

最後に

ディレクターの職種とは異なりますが、私はプロデューサーとして、

“アシスタント”がつく肩書きを経験してきましたが、やっぱりこの呼称は大切で、

“プロデューサー”になるために評価されたいと思う気持ちが働けば働くほど強くなり良いモチベーションを保って頑張れるものです。

“アシスタント”がつくと下積み時代の印象が強くなりますが、実際はそうでもなくて”プロデューサー”とする業務内容はほとんど変わらないケースも多いです。

ただやっぱりディレクターの場合は制作現場の中身に深く関わるため、

想像を超えた物量の業務がアシスタントディレクターに降りかかるケースが多いようです。

制作現場は多くの人間と1つのものを作り上げる魅力があり、アシスタントディレクターは制作がスムーズに進む上で欠かせない大切な存在です。

 

TV業界全体で今後どのように働き方改革が実践されていくか、今後の動向が気になります。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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